基板実装に従事して30年の実装技術者です。
新製品や工場監査の悩み解決になればと思いブログを書いています。
大量生産品は海外生産が多いですが
現代を支える産業なので国内生産することが技術発展にも繋がります。
基板実装業界の発展が未来を支えるので
この業界に関わる方が増えることを望んでいます。
メタルマスクはクリームはんだ印刷工程で使用する治工具で表面実装工程(SMT工程)の で最重要な治工具になります。
それはクリームはんだ印刷で70%以上の品質を決めるからです。
このメタルマスクの製造方法やメタルマスク改善での品質改善や良し悪しの見方を紹介します。
メタルマスクを年間500~1,000版作成している経験からの記事となります。
メタルマスク手配担当の方やメタルマスクを実際に使われている方へ向けた記事です。
プリント基板実装に興味がある方や製造業に興味がある就活生にも役立つですよ~!
プリント基板は携帯電話、スマートフォン、ゲーム機、家電、自動車、医療、飛行機、宇宙関係など、製品の頭脳の役割をするあらゆる電化製品に組込まれ箇所に使われています。
電化製品は、全てプリント基板に半導体等の電子部品を実装されて構成されている。
プリント基板実装が無ければ現代の生活は出来ません。
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分かり易くSMT工程(表面実装)製造工程の流れを解説はこちら
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メタルマスクとは
プリント基板実装に中で表面実装工程(SMT工程)で使用治具でプリント基板にクリームはんだを供給する治具をメタルマスクと言います。
基板の上にメタルマスクを置きクリームはんだを基板上に印刷します。
ステンシルの厚さは主に80μm~200μm以下の極薄ステンレス板にプリント基板上部品箇所へ微細に切削し極小開口穴を生成した治工具になります。
表裏の両面部品実装する場合、印刷受け台治具を使う事があります。
社内メタルマスク開口部修正でのノウハウ/品質向上/コストダウンはこちら
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メタルマスク製造に必要なガーバーデータ
ガーバーデータとは、アメリカのGerberSystems社が開発したファイル形式でプリント基板レイヤー毎に基板設計より出力されるデータ群で治工具用レイヤー、基板製造に使うレイヤー等様々な種類があります。
メタルマスク製造用のレイヤーも準備されているのが一般的で設計図的な位置付けのデータです。
ガーバーデータが無くても製作可能
メタルマスクを作成するにはガーバーデータが必要になりますがガーバーデータを保有していなくても作成する方法があります。
それは未実装状態のプリント基板を準備すること。メーカーでスキャナー取得しそれをガーバーデータ出力する事も可能です。
DXFデータをガーバー変換する事も可能ですのでメタルマスクを作成することは可能です。
(メーカー毎で可否あり)
メタルマスク製造方法
メタルマスク製造方法としては主に3種あります。
YAGレーザー
レーザー加工機にてメタルマスク開口を形成します。
加工時間も高速でありながら高精度な開口形状を可能で短納期対応も出来ます。
コスト、納期が最大のメリットで現在主流の加工方法です。
アディティブ
ニッケルを用い電鋳加工でメタルマスク開口を成形するメタルマスクで特徴は微細な加工が得意で任意な板厚設定が可能なこと。
欠点として加工時間が長いため、納期が掛かる為YAGレーザーが主流になっています。
エッチング
古くからメタルマスク加工方法で使われており露光・現像技術を用いしケミカルエッチングで開口を形成します。
加工壁面の状態が粗く微細開口が苦手なため、YAGレーザーが主流になっています。
レーザー工法での材料について
メタルマスク製造方法として主流のレーザーでの材料は極薄のSUS材を用います。
メタルマスクメーカーは基本的な材料としてSUS304を使用おり指定すればSUS301を使用できるメーカーもあります。
同じSUS304でも若干違いがあります。例として
①SUS304
②SUS304 3/4 TA
SUS304には硬さ、引張強さにちがいがあり1/2H、3/4H、Hという順で”H”が一番硬く引張り強さがあります。
この部分がメーカーテンション技術に繋がります。
SUS304には硬さ、引張強さに違いがあり
http://www.toyo-success.co.jp/product/characteristic_s.html
1/2H、3/4H、Hという順で
Hが一番硬く引張り強さがあります。
この部分がメーカーテンション技術に繋がります。
TA処理とは
https://www.nipponkinzoku.co.jp/products/tension-anneling
熱処理と形状矯正により、
ばね材の残留応力(内部応力)が大幅に軽減されております。
素材平坦度に優れ、精密プレス加工用途や
エッチング/メタルマスク用途に最適。
メタルマスク板厚について
メタルマスクの板厚は一般的には10μm単位でして可能です。
範囲としては80μm~200μmまで指定可能で80μm以下についてはメーカーへ対応可否を確認する必要があります。
メタルマスクメーカーのノウハウ
基本的にはレーザー加工技術、版貼付け、テンション張り技術が重要です。
大手だから技術力があるとは限りません。ノウハウが必要です。
実際に検証して良いメタルマスクを採用する必要があります。
その技術力の見方について説明します。
真円/開口エッジの再現性
YAGレーザーの技術には真円再現性があります。
微細開口には開口再現性が必要です。
どんなに早く加工が出来ても形状が歪であれば意味がありません。
また画像には光も当てており、円開口にエッジが無いと縁取り上に見えます。
レーザー開口のノウハウが不足していると開口エッジが丸みを帯びクリームはんだ印刷時の形状断面がダレるので品質安定し難いです。
印刷工程に悪影響が出て、クリームはんだ印刷状態やSPI(はんだ印刷検査)にも影響が出ます。
壁面加工での優位性
上記では真円の再現性について記載しましたがもう一つのクリームはんだ印刷に影響が出る内容として
開口品質として開口壁面(切断面)の粗さがあります。
それはレーザー開口ノウハウになり、同じ装置を使っていても明確に差が出る技術になります。
・レーザーヘッド動作で切断面を当て方(始点)をステンシルのどこにしているのか?
・装置のテーブル移動(駆動)方法
・装置をカスタム開発しているメーカー
https://dynatron.co.jp/products/t11-hp
電解研磨オプションに注意
最近ではメタルマスクメーカーが様々なオプションがありますが
電解研磨には注意が必要です。
それはYAGレーザー開口技術が不足している為に欠点を排除する為に行われております。
電解研磨で表面/壁面粗さを慣れらかにする事が目的でエッジ形状が丸くなります。
紗張りテンション技術
メタルマスク製造技術には紗貼りの技術も重要です。
上記イメージ図のような組み合わせでメタルマスクは出来ています。
マスク枠とコンビネーションの距離を短くして紗貼りする事は非常に難しいのですがテンションが強くなるという
メリットとしてがあります。
紗貼り技術が未熟だとコンビネーションが太くなりテンション値が弱く位置決め精度やクリームはんだ印刷形状に
悪影響があります。
メタルマスクテンション重要性
メタルマスクテンションの重要性を理解していないとクリームはんだ印刷での再現性(繰り返し精度)に影響が出て
何が問題でクリームはんだ印刷に不具合があるのか確定するのが厳しくなります。
テンション値には十分注意をしてください。
※測定箇所は上記メタルマスク部と紗貼りの境界付近が良いです。
自動洗浄機対応
最近は生産終了後のメタルマスク清掃は自動洗浄機が多くなっており自動洗浄機に投入するならばメタルマスク貼付けに対策が必要です。
例えば
・コンビネーションにUV硬化を用いて洗浄液に負けないようにする。
・使用する溶剤に耐性がある接着剤を使用してもらう。
最初から自動洗浄対策済のメタルマスクもありますが言わないと実施していないメーカーもありますので注意必要です。
メタルマスク貼付け接着が緩むとメタルマスクテンションが甘くなり位置ずれや抜け性不安定になる可能性があります。
納入仕様書の取交しの重要性
メタルマスクについて納入仕様書の取り交わしをしていますか?
取り交わしをしていない方が意外と多いかと思います。
重要なのは自身で使用するメタルマスク仕様をキッチリ決めて運用する必要がります。
製造方法、、寸法基準、出荷基準、テンション値等を必ず複数メーカーで比較して内容を決めていきましょう!
メタルマスクコスト
メタルマスクコストは成熟している治工具になります。
特に関東エリアは平均的に安価になります。
同じ国内でも地域により価格帯が違うという特徴があります。
複数工場保有するメーカーの注意点
国内に複数工場を保有しているメーカーの場合は必ず製造工場を指定する事をおススメします。
同じメーカーでも工場で保有する設備が違うため、メタルマスク毎の差異を出したくないためになります。
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