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鉛フリーはんだの種類と選び方|環境配慮&コストを考慮した最適な選択肢とは?

プリント基板実装工場

鉛フリーはんだを選ぶ際に、「どの種類が適しているのか?」「環境に優しい選択はコストに見合うのか?」とお悩みではないでしょうか?

この記事では、鉛フリーはんだの成分や特性、選び方のポイントを分かりやすく解説し、作業環境や予算に合わせた最適な選択をサポートします。

適切なはんだを選ぶことで、製品の品質や信頼性が向上し、コスト削減と環境配慮の両方を実現。

持続可能な製造で、企業のイメージアップと長期的な成長にもつながります。

鉛フリーはんだの効果的な活用方法を知り、今すぐ製品づくりに活かしてみませんか?

この記事で分かること

・鉛フリーはんだの基本成分と、それぞれの成分がもたらす役割
・用途別の鉛フリーはんだの種類と、それぞれの特徴や選び方
・環境への配慮やコストを考慮した鉛フリーはんだのメリットとデメリット
・銀の価格変動などのコスト管理方法と、無銀はんだの活用メリット
・鉛フリーはんだに関する国際的な法規制と、その対応策
・鉛フリーはんだと鉛入りはんだの違いと、信頼性・品質を確保するポイント
・製品の品質向上や企業イメージアップにつながる、鉛フリーはんだの効果的な活用方法

この記事の目次(クリックでジャンプ)

1. 結論:鉛フリーはんだを選ぶべき理由と成分がもたらす効果

BGAリワーク

鉛フリーはんだは、現代の製造現場で「必須」と言えるほど、環境と作業の両面で多くのメリットを持っています。

特に「環境にやさしい」だけでなく、接合の強度や品質も向上し、信頼性のある製品作りに大いに役立っています。

それでは、その理由と鉛フリーはんだの成分がどのように作業に影響するのか、詳しく見ていきましょう。

1-1. 環境にやさしい「鉛フリーはんだ」が求められる背景

鉛フリーはんだが広く使われるようになった理由の一つに、「環境への配慮」があります。従来のはんだに含まれていたは、電子廃棄物の中で土壌や水を汚染する原因となり、健康への悪影響も懸念されていました。

  • 環境規制の影響
    EUのRoHS指令をはじめとする各国の環境規制が、鉛フリーはんだの使用を推進しています。
    これにより、鉛フリーはんだを使用することが国際基準となり、環境への配慮が求められる企業が増えています。
  • 長期的なコスト削減
    鉛フリーはんだを採用することで、環境対策コストや将来的な規制強化への対応も楽になります。

鉛フリーはんだを選ぶことは、地球環境だけでなく、企業の将来にもポジティブな影響を与えます。「環境に配慮した製品を作っている」という企業の信頼も高まるため、お客様からの支持も得やすくなるのです。

1-2. 鉛フリーはんだの成分が接合品質に与える影響とは?

鉛フリーはんだの成分は、主にスズ(Sn)、銀(Ag)、銅(Cu)から成り立っています。

この組み合わせが、製品の接合品質を大きく左右します。

成分役割効果
スズ(Sn)基本成分融点が低く、金属との接合性を高めます。
銀(Ag)強度を高める接合部分の耐久性が増し、衝撃や振動に強くなります。
銅(Cu)コストと品質のバランス微量でも接合部の信頼性を向上し、スズの「銅食い」を防ぎます。

この3つの成分が組み合わさることで、鉛フリーはんだの接合品質が安定し、信頼性の高い接合が可能になります。

特に銀が加わることで、はんだの機械的強度が増し、振動や衝撃が加わるような製品にも耐えられる品質を提供できます。

  • 高温環境での耐久性
    鉛フリーはんだは、従来のはんだよりも融点が高く、耐熱性が向上しています。
    これにより、熱がかかる環境下でも安定した品質を保つことができます。
  • 安心して使える信頼性
    鉛フリーはんだの成分が安定した接合をもたらし、製品寿命も延ばす効果があるため、製品の信頼性を確保するためにも適した選択肢と言えるでしょう。

鉛フリーはんだを選ぶことで、環境に優しいだけでなく、高品質で信頼性の高い製品づくりが可能になります。地球と製品の未来のために、鉛フリーはんだはまさに「今選ぶべき」一歩です。

2. 鉛フリーはんだの基本成分とその役割

挿入部品

鉛フリーはんだの特徴は、使われる成分がそれぞれ「接合性」「耐久性」「安定性」など重要な役割を持っていることです。

鉛フリーはんだの基本成分を一つずつ確認し、どのような役割を果たしているのかを見ていきましょう。

2-1. スズ(Sn)の役割:ぬれ性と接合性の要

成分役割主な用途とメリット
スズ(Sn)接合の安定、ぬれ性向上一般的なはんだの基盤成分
銀(Ag)強度と耐久性向上機械的強度が必要な製品
銅(Cu)コストと品質のバランスコスト効率を重視したい製品
ビスマス(Bi)低温作業対応熱に弱い部品の接合に適する

スズ(Sn)は、鉛フリーはんだの主成分で、接合において「ぬれ性」を向上させる役割を持っています。

  • ぬれ性とは?
    金属表面に溶けたはんだがなじみやすくなる性質を指し、スズの量が増えると金属の表面に均等に広がりやすくなります。
    きれいな接合ができるため、はんだ付け作業をスムーズに進めるのに重要なポイントです。
  • 接合性への影響
    スズは融点が低いため、適切な温度で溶けやすく、金属としっかり接合するのに適しています。
    つまり、スズが含まれていることで、はんだが安定して金属に密着し、強度のある接合が実現します。

2-2. 銀(Ag)のメリット:強度と耐久性を支える成分

銀(Ag)は、接合部に「強度」と「耐久性」をもたらす成分です。

  • 強度の向上
    銀が加わると、接合部の機械的な強度が増し、振動や衝撃に対してより強くなります。
    これにより、製品の耐久性が向上し、長期にわたって信頼性の高い性能が維持されます。
  • 耐久性の向上
    また、銀は温度変化にも強いため、温度サイクル(熱と冷の繰り返し)にさらされる環境下でも接合が安定しています。
    特に、精密機器や車載用電子部品など、高い耐久性が求められる製品に適しています。

2-3. 銅(Cu)の追加効果:接合安定とコスト削減のバランス

銅(Cu)は、少量の添加で接合の「安定性」を高めると同時に、コスト削減にも貢献します。

  • 接合の安定性
    銅が含まれることで、スズによる「銅食い」(スズが基板の銅を溶かしてしまう現象)を抑え、接合部の安定性が向上します。これは、はんだの耐久性や品質の向上にもつながります。
  • コストパフォーマンス
    銅は銀に比べて安価なため、銅の添加により、銀の量を抑えたはんだ製品が生まれ、コストが削減されます。そのため、コストを重視する際には銅を含むはんだが選ばれることが多いです。

2-4. ビスマス、インジウムなどの特殊成分:特定用途での役割

ビスマス(Bi)やインジウム(In)は、特定の用途に対応するために添加されることが多い成分です。

  • ビスマス(Bi)
    ビスマスは融点を下げる効果があり、低温ではんだ付けを行いたい場合に使用されます。
    これにより、熱に弱い部品や繊細な部品でもダメージを抑えつつはんだ付けが可能です。
  • インジウム(In)
    インジウムは、冷却効果や温度管理が必要な環境で使用されることが多い成分です。
    温度に敏感な接合部でも、インジウムが含まれることで接合の安定性が維持され、品質を保つことができます。

3. 鉛フリーはんだの主な種類と特徴

基板実装

鉛フリーはんだには、成分の組み合わせにより異なる種類があり、用途に合わせた特徴を持っています。
代表的な鉛フリーはんだとその特徴について見ていきましょう。

種類融点主な用途メリットデメリット
SAC305系約217℃耐久性重視の製品強度と耐久性が高いコストが高い
SnCu系約227℃コスト重視の製品コストが安定している耐久性がやや劣る
SnBi系約138℃熱に弱い製品低温で作業が可能高温環境での使用には不向き

3-1. SAC305(スズ-銀-銅)系はんだ:汎用性が高い鉛フリーはんだ

SAC305は、スズ96.5%・銀3.0%・銅0.5%という成分配合のはんだで、汎用性が非常に高い鉛フリーはんだとして多くの場面で使用されています。

  • 特徴
    強度と耐久性のバランスがよく、一般的な電子機器から自動車、家電製品まで幅広く使用されています。
  • メリット
    高温に強く、耐久性に優れているため、熱がかかるような環境下でも品質が安定します。
  • デメリット:
    銀を含むためコストが高くなる点が挙げられます。

SAC305は、特に耐久性が求められる製品や、信頼性の高い接合が必要な場面で選ばれることが多いはんだです。

3-2. SnCu系はんだ:コスト重視の鉛フリーはんだ

SnCu系はんだは、スズ99.3%・銅0.7%という構成で、コストパフォーマンスを重視した鉛フリーはんだです。銀を含まないため、コストが抑えられる点が特徴です。

  • 特徴
    銀が含まれていないため、材料コストが低く、量産品や価格競争が激しい製品に向いています。
  • メリット
    コストが安価で、銀の価格変動の影響を受けにくい点が利点です。
  • デメリット
    SAC305に比べて耐久性がやや劣るため、高強度を求められる場面には不向きです。

SnCu系はんだは、コスト重視で導入でき、比較的シンプルな接合が求められる場面で適しています。

3-3. SnBi系はんだ:低温作業に適した鉛フリーはんだ

SnBi系はんだは、スズとビスマスを含む低温用のはんだです。主にビスマスを含むことで融点が下がり、低温での作業が可能になります。

  • 特徴
    熱に弱い部品や基板の接合に適しており、低温での作業が可能です。
  • メリット
    融点が低いため、熱ダメージを防ぎながら接合でき、特に温度管理が難しい部品で効果的です。
  • デメリット
    強度がやや劣るため、高温環境での使用には不向きです。

SnBi系はんだは、温度に敏感な部品や製品の修理など、特定の用途で重宝されています。

3-4. 各成分がもたらすメリット・デメリット

鉛フリーはんだの種類ごとに含まれる成分と、それぞれの特徴によって次のようなメリット・デメリットが見られます。

鉛フリーはんだの種類メリットデメリット
SAC305系高い強度と耐久性、幅広い用途に対応コストが高め
SnCu系コストが安く、量産品向け耐久性にやや劣る
SnBi系低温での作業が可能で、熱ダメージを抑える強度が低く、高温環境には不向き

鉛フリーはんだを選ぶ際には、作業温度や接合強度、コストなどを総合的に考えて、用途に適した種類を選ぶことが大切です。用途に合わせたはんだの選択は、製品の品質やコストパフォーマンスに直接影響を与えるため、慎重に検討しましょう。

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4. 鉛フリーはんだを使用するメリットとデメリット

鉛フリーはんだは、環境保護や法規制の対応を含むさまざまな面でメリットがありますが、一方で作業温度やコスト面での課題も抱えています。

鉛フリーはんだを使用する際のメリットとデメリットを見ていきましょう。

4-1. メリット:環境に優しい、機械的強度の向上

鉛フリーはんだの最大のメリットは、「環境に優しい」点と「機械的強度が高い」点にあります。

  • 環境に優しい
    鉛フリーはんだには鉛が含まれていないため、廃棄時に土壌や水が汚染されるリスクが少なく、環境保護に貢献します。また、RoHS指令をはじめとする世界的な環境規制に準拠しているため、国際市場での製品流通にも有利です。
  • 機械的強度の向上
    銀を含むSAC305系などの鉛フリーはんだは、従来の鉛入りはんだよりも強度が高く、振動や衝撃に耐える力が強いため、耐久性が求められる製品に適しています。

これらのメリットから、鉛フリーはんだは現代の製造現場で環境保護と信頼性を兼ね備えた選択肢として注目されています。

4-2. デメリット:高い作業温度による影響とコストの課題

鉛フリーはんだには、環境面でのメリットがある一方で、いくつかのデメリットもあります。

  • 高い作業温度
    鉛フリーはんだは、一般的に融点が高く、はんだごてや装置の温度設定も高めにする必要があります。
    熱に弱い部品にダメージを与えるリスクがあるほか、高温作業が続くと設備やはんだごての消耗も早くなる可能性があります。
  • コストが高い
    銀などの貴金属が含まれるため、材料コストが高くなる傾向にあります。
    また、銀の価格は市場の動向に影響を受けやすく、価格の安定性が低いという課題もあります。
    このため、製造コストに大きな影響を与えることがあります。

鉛フリーはんだを使用する際は、コストと作業温度の管理が課題になるため、事前に適切な対策を検討することが必要です。

4-3. 競合他社や規制対応での鉛フリーはんだの重要性

環境意識の高まりとともに、鉛フリーはんだの使用は今や競合他社との差別化にもつながる重要なポイントです。

  • 規制への対応
    多くの国で鉛の使用が制限されており、環境に配慮した製品が求められています。
    鉛フリーはんだを使用することで、国際市場での規制に適応した製品を提供でき、製品の競争力も向上します。
  • 企業イメージの向上
    鉛フリーはんだを使用していることをアピールすることで、「環境に配慮した企業」としてのイメージアップにもつながります。
    これにより、企業の社会的責任(CSR)を果たし、環境意識の高い消費者や取引先からの評価も得やすくなります。

鉛フリーはんだのメリットとデメリットを理解し、用途や環境に応じて最適な選択をすることが大切です。環境に配慮しつつ、高品質な製品づくりを目指すための一歩として、鉛フリーはんだの使用を検討する価値は十分にあります。

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5. 鉛フリーはんだの種類ごとの用途と選び方

鉛フリーはんだにはいくつかの種類があり、用途に応じて選ぶことが大切です。

作業環境やコスト、必要な耐久性などによって適したはんだは異なるため、それぞれの特徴を踏まえて適切な選択を行いましょう。

5-1. 高温作業に向くはんだ vs. 低温作業に向くはんだ

はんだ付け作業は、製品や部品の耐熱性に合わせて適切な温度ではんだを選ぶ必要があります。

  • 高温作業に向くはんだ
    SAC305(スズ-銀-銅)系はんだは、耐熱性に優れ、融点が約217℃と高めです。
    このため、熱に強い部品や機械的な強度が必要な製品に適しています。
    自動車や家電製品など、安定した耐久性が求められる作業におすすめです。
  • 低温作業に向くはんだ
    SnBi系(スズ-ビスマス)系はんだは、融点が約138℃と低く、熱に弱い部品の接合に向いています。
    熱によるダメージを避けたい場合に適しており、特に精密機器や熱に敏感な部品に向いています。
種類融点用途例
SAC305系約217℃自動車、家電製品、工業用部品
SnBi系約138℃精密機器、熱に弱い部品

5-2. コスト重視の場面で最適なはんだとは?

種類コスト特徴
SnCu系銀不使用でコスト削減、一般的な電子機器に最適

コスト面を重視する場合には、以下のはんだが有効です。

  • SnCu系(スズ-銅)系はんだ
    銀が含まれていないため、比較的コストが抑えられ、量産が必要な製品やコストパフォーマンスを優先する際に適しています。
    一般的な電子機器の部品やシンプルな回路には、このSnCu系はんだが選ばれることが多いです。

5-3. 特定用途や耐久性が求められる場合のはんだ選択

種類用途メリット
SAC305系耐久性が必要な製品強度が高く、振動・衝撃に強い
SnBi系熱にデリケートな製品低温で接合でき、部品に優しい

特定の用途や高い耐久性が必要な場合には、次のはんだが適しています。

  • SAC305(スズ-銀-銅)系はんだ
    銀を含むことで接合部の強度が高まり、振動や衝撃に耐えやすいのが特徴です。
    機械的ストレスが加わる環境や、長期的な使用が求められる製品に適しています。
  • SnBi系はんだ
    低温作業が必要な製品や、熱にデリケートな部品の修理などに向いており、冷却効果が必要な場合にも適しています。耐久性が求められるが熱ダメージを防ぎたい場合に最適です。

鉛フリーはんだの選び方は、作業温度、コスト、耐久性の観点で異なるため、作業環境や目的に合わせて適切な種類を選ぶことが、製品の品質とコストパフォーマンス向上に欠かせません。

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6. 鉛フリーはんだのコスト管理と選択時のポイント

実装基板

鉛フリーはんだのコスト管理は、製造コストを抑えながらも品質を保つために重要です。

ここでは、銀の価格変動がもたらす影響や、コストを抑えるためのポイントについて解説します。

6-1. 銀の価格変動がもたらすコストへの影響

鉛フリーはんだの中でも、SAC305系(スズ-銀-銅)は銀を含むため、材料費に銀の価格が大きく影響します。

  • 銀の価格変動
    銀は貴金属のため、相場が変動しやすく、特に急激な価格上昇があると材料コストが大幅に上がることがあります。
    銀価格が高騰すると、はんだ1kgあたりのコストも上昇し、製造全体に影響を与えます。
  • 製造コストへの影響
    銀の含有量が多いはんだほど、相場の影響を受けやすく、コスト管理が難しくなるため、必要な強度や耐久性と価格のバランスを慎重に検討する必要があります。

6-2. 無銀はんだ(SnCu系)を選択するメリット

特徴メリット
無銀はんだ(SnCu系)銀の価格変動の影響がないため、コストが安定。大量生産に適している。

銀の価格変動に左右されない選択肢として、無銀はんだ(SnCu系)が挙げられます。

  • コストの安定
    無銀はんだは、スズと銅のみで構成されているため、銀価格の影響を受けません。
    このため、長期的に安定したコストで調達が可能です。
  • 大量生産に向いた選択
    銀を使用しないため、コストパフォーマンスが高く、量産品や単価を抑えたい製品に適しています。
    製造コストの影響を最小限に抑えたい場合や、大量に調達する場合には効果的な選択肢です。

6-3. 市場の相場に左右されないコスト管理の方法

鉛フリーはんだのコストを安定させるためには、いくつかの方法で相場の影響を緩和することができます。

  • 長期契約での価格固定
    取引先と長期の調達契約を結び、価格を固定することで、相場変動による影響を最小限に抑えます。一定期間のコストを見通しやすくなるため、予算管理がしやすくなります。
  • 代替材料の検討
    特定の製品に強度や耐久性がそこまで求められない場合、SAC305から無銀はんだ(SnCu系)に切り替えることで、コスト安定と材料費削減が期待できます。
  • 需要予測に基づいた在庫確保
    銀の価格が低い時期に必要量を多めに調達することで、急な価格変動に備え、コストを安定させることが可能です。需要予測を基に調達量を計画的に調整すると、効果的にコストを管理できます。

鉛フリーはんだのコスト管理は、相場や製品のニーズに応じた選択と管理が鍵となります。安定したコスト管理のための方法を取り入れることで、製品の競争力を保ちながら、安定した品質を提供することができます。

7. 鉛フリーはんだと従来の鉛入りはんだの違い

鉛フリーはんだと従来の鉛入りはんだは、作業温度や環境への影響、信頼性の点で違いがあります。

ここでは、それぞれの違いを確認し、どのような場面で鉛フリーはんだが有効かを理解していきましょう。

7-1. 作業温度と機器への影響の違い

特性鉛フリーはんだ鉛入りはんだ
融点約217℃約183℃
作業温度高温が必要低温でも作業可能
機器の消耗早くなりやすい比較的少ない
環境への影響環境に優しい環境に有害な可能性がある

鉛フリーはんだは従来の鉛入りはんだに比べ、一般的に融点が高く、使用時の温度設定も異なります。

  • 作業温度の違い
    鉛入りはんだ(例:共晶はんだ)は約183℃で溶けますが、鉛フリーはんだ(例:SAC305)は約217℃の高温が必要です。
    温度差により、はんだごてやリフロー装置の設定温度を高めにしなければならず、熱に弱い部品には負担がかかることがあります。
  • 機器への影響
    高温での作業が多くなるため、はんだごての消耗が早まり、コスト増加やメンテナンス頻度の増加につながる場合もあります。
    鉛フリーはんだを使用する際には、適切な機器の選定や温度管理が重要です。

7-2. 環境規制における鉛フリーはんだの必要性

鉛フリーはんだが普及した背景には、国際的な環境規制が大きく影響しています。

  • 環境規制
    欧州連合のRoHS指令や、各国の環境保護法規制によって、電子機器における鉛使用が制限されました。
    鉛を含まない鉛フリーはんだが標準的な選択肢となり、多くの製造業が鉛フリーへの移行を余儀なくされています。
  • 企業の社会的責任(CSR)
    鉛フリーはんだを使用することで、環境への配慮を示すことができ、環境保護に貢献する姿勢が企業イメージ向上にもつながります。
    消費者や取引先からの信頼も得やすくなり、結果としてブランド価値を高める効果も期待できます。

7-3. 信頼性と品質に関する検討ポイント

鉛フリーはんだと鉛入りはんだの信頼性と品質の違いには、次のような点が挙げられます。

  • 品質面
    鉛フリーはんだの接合部は、衝撃や振動に対する耐久性が高いものの、酸化や湿度の影響を受けやすいとされています。
    特にSAC305系はんだは機械的な強度があるため、振動が多い環境や自動車関連の電子機器などに適しています。
  • ウィスカー問題
    鉛フリーはんだは、使用環境によっては「ウィスカー」(金属の針状結晶)が発生し、これが短絡(ショート)を引き起こすリスクがあります。
    品質管理をしっかり行い、ウィスカー対策も考慮する必要があります。
  • 経年劣化の違い
    鉛フリーはんだは従来の鉛入りはんだに比べて、経年劣化しやすい場合もあり、耐用年数が求められる製品には適切な検討が必要です。

鉛フリーはんだと鉛入りはんだには、それぞれの特性に応じたメリット・デメリットがあるため、用途や環境に合わせて適切なはんだを選択することが重要です。鉛フリーはんだは、環境規制や信頼性を求める現代の製造現場で必須の材料となりつつあり、製品の品質や企業イメージ向上に貢献しています。

8. 鉛フリーはんだの法規制と対応策

鉛フリーはんだが使用される背景には、環境保護を目的としたさまざまな法規制があります。

ここでは、鉛フリーはんだが求められる具体的な法規制と、国際市場での対応について解説します。

8-1. RoHS指令や各国の鉛使用制限に対する対応

鉛フリーはんだの普及を促進した主要な法規制には、欧州連合(EU)のRoHS指令があります。

  • RoHS指令とは
    RoHS(Restriction of Hazardous Substances)指令は、2006年にEUで施行され、電子・電気機器への有害物質(鉛、カドミウム、水銀など)の使用を制限しています。鉛はこの指令の対象物質であるため、EU市場に製品を販売するためには、鉛フリーの材料を使用することが求められています。
  • 各国での鉛使用制限
    RoHS指令に続き、中国の「中国RoHS」、日本の「J-Moss」、韓国の「韓国RoHS」など、各国でも鉛の使用を制限する法律が導入されました。これにより、鉛を含まない鉛フリーはんだの採用は国際基準となりつつあります。

これらの規制に対応することで、国際的な環境基準を満たし、各国の市場での販売が可能となります。特に、RoHS指令をはじめとする鉛使用制限は、環境への配慮と市場アクセスの両面で鉛フリーはんだを使用する大きな動機付けとなっています。

8-2. 国際市場での規制対応による鉛フリーはんだのメリット

鉛フリーはんだを使用することには、環境保護のほかにも多くのビジネス上のメリットがあります。

  • 国際市場での競争力向上
    各国の環境規制に対応した製品は、国際市場での競争力が高まります。特にEUやアジア市場での鉛使用制限は厳しく、鉛フリー対応が進んでいる企業は市場参入が容易となり、国際的な取引先や消費者からの信頼も得やすくなります。
  • 企業イメージと社会的責任(CSR)
    鉛フリーはんだを採用することで、「環境に配慮した企業」というイメージをアピールできます。
    企業の社会的責任(CSR)を果たすことで、取引先や消費者からの評価も高まり、長期的なブランド価値の向上にもつながります。
  • 将来的な法規制のリスク回避
    鉛フリーはんだを使用することで、今後さらに厳しくなる可能性のある環境規制にも対応しやすくなります。
    新たな規制が導入された場合でもスムーズに対応でき、製品の設計変更や余分なコストを回避できるため、長期的なコスト削減にもつながります。

鉛フリーはんだは、環境規制の遵守と国際市場での競争力強化に欠かせない選択です。規制対応だけでなく、企業イメージ向上や将来的なリスク回避の観点からも、鉛フリーはんだの使用は製造業界において非常に価値のある取り組みとなっています。

9. まとめ:鉛フリーはんだの成分解説と適切な選択方法

鉛フリーはんだは、環境配慮の観点から国際的な規制をクリアするためにも重要な材料です。

ま製品の耐久性や品質を支える成分として、用途や目的に応じて適切な選択が求められます。

鉛フリーはんだの選び方と、そのポイントをまとめました。

9-1. 最適な鉛フリーはんだ選びのポイント

鉛フリーはんだを選ぶ際には、以下の点を意識することが大切です。
用途別に推奨されるはんだを「用途」「求める特性」「推奨はんだ」の形でまとめます。

用途求める特性推奨はんだ
自動車、工業用高い耐久性と強度SAC305系
精密機器熱に弱い部品の接合SnBi系
一般電子製品コスト重視SnCu系
  • 使用する環境や作業温度を考慮
    高温での耐久性が必要な場合はSAC305系など、耐久性に優れたはんだを選択するのが良いでしょう。逆に、熱に弱い部品の接合にはSnBi系の低温用はんだが適しています。
  • コストと材料のバランス
    コストが重視される場合は、銀を含まないSnCu系が効果的です。特に、量産品などでコストパフォーマンスを高めたい場合には、SnCu系はんだを選ぶと経済的に安定しやすくなります。
  • 特定用途に応じた選択
    精密機器や車載製品など、強度や特定の品質基準が求められる製品には、それに合った鉛フリーはんだを使用することが信頼性向上につながります。

9-2. 環境、コスト、作業性に応じた選択の重要性

鉛フリーはんだの選択においては、次の要素のバランスが重要です。

  • 環境への配慮
    環境保護が叫ばれる今、鉛フリーはんだの使用は企業の責任でもあります。
    鉛フリーはんだを使うことで、RoHS指令などの規制に準拠し、グローバルな市場に対応できる製品を提供できます。
  • コスト管理
    製品のコスト効率も、鉛フリーはんだを選ぶ際の重要な基準です。
    特に、銀の価格が変動しやすいため、必要に応じて無銀はんだ(SnCu系)を選ぶことでコストの安定を図れます。
  • 作業性と信頼性
    鉛フリーはんだは、融点が高いため、作業時の温度管理や機器の選定が求められます。また、接合部の強度や耐久性も考慮し、製品の品質を確保できるはんだを選ぶことが必要です。

鉛フリーはんだの適切な選択は、製品の品質や環境への配慮、そしてコスト削減にもつながります。製造現場においても、使用環境や目的に合った鉛フリーはんだを見極め、長期的な視点で選択することが大切です。これにより、持続可能な生産と高い製品価値の実現に寄与できます。

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